オリンパス・デジタル一眼カメラ 使用レポート(ハイレゾショット編)

レポートと撮影:吉森信哉

協力・画像提供:オリンパス株式会社

第2回意見懇談会「カメラメーカー技術者と話そう!」 オリンパス(株)編(JPS会員限定)開催

第2回意見懇談会「カメラメーカー技術者と話そう!」 オリンパス(株)編会場風景、参加したJPS会員からは、普段使用しているオリンパス製のカメラやレンズなどに対する意見や質問が数多く寄せられた。質疑応答の様子。参加したJPS会員からは、普段使用しているオリンパス製のカメラやレンズなどに対する意見や質問が数多く寄せられた。

2016年6月27日、JPS会員限定で数十名のJPS会員の参加し、「カメラメーカー技術者と話そう!オリンパス(株)編」(主催:公益社団法人日本写真家協会 企画委員会)と題された意見懇談会が同社施設内にて開催されました。

司会・進行は、企画委員会の熊切大輔氏。オリンパス(株)からは、映像開発本部副本部長の片岡摂哉氏など9名のスタッフが参加。そして、現在のオリンパス製品の紹介、事前アンケートに基づいた質疑応答、フリートークタイム、といったプログラムで意見懇談会は進行していきました。参加したJPS会員からは、普段使用しているオリンパス製のカメラやレンズなどに対する意見や質問が数多く寄せられました。

会場内の一角に設けられた、マイクロフォーサーズシステムのカメラボディや交換レンズ群のタッチコーナー。参加会員は、休憩時間などに興味深そうに手にしていた。 オリンパス機材展示 ホームページ委員会による実写レポート ホームページ委員会による実写レポート

オリンパス・デジタル一眼カメラ 使用レポート(ハイレゾショット編)

その意見懇談会内において、この「写真豆知識」向けに、現在のオリンパス一眼カメラの独自機能の実写レポート+質疑応答もおこないました。その機能の中から、今回は「ハイレゾショット」に関するレポートをお送りします。ちなみに、実写レポートを担当したのは、筆者を含めた3名の当編集部(ホームページ委員会)メンバーです。

質疑応答に対応して頂いたオリンパス(株)スタッフ。左から、日暮正樹氏(映像システム開発2部 グループリーダー)、高瀬正美氏(映像商品開発2部 部長)、片岡摂哉氏(映像開発本部 副本部長)、寺田利之氏(映像マーケティング部 部長)、加藤茂氏(光学システム開発3部 部長)、志村和彦氏(画像システム開発2部 グループリーダー)質疑応答に対応して頂いたオリンパス(株)スタッフ。左から、日暮正樹氏(映像システム開発2部 グループリーダー)、高瀬正美氏(映像商品開発2部 部長)、片岡摂哉氏(映像開発本部 副本部長)、寺田利之氏(映像マーケティング部 部長)、加藤茂氏(光学システム開発3部 部長)、志村和彦氏(画像システム開発2部 グループリーダー)

「ハイレゾショット」とは?

ボディー内手ぶれ補正機構を利用して、センサーを0.5ピクセル単位で動かしながら1回のシャッターで8枚撮影。そのデータを元にカメラ内で画像処理をおこない、センサー画素数以上の高解像な画像を生成する機能。これが「ハイレゾショット」です。現在のオリンパス製デジタル一眼カメラでこの機能を搭載しているのは、E-M5 MarkIIとPEN-Fの2機種になります。ハイレゾショットで撮影・生成された画像の画素数は、16M(メガ)センサーを採用するE-M5 MarkIIでは「40M」相当になり、20Mセンサーを採用するPEN-Fでは「50M」相当になります。M.ZUIKOレンズは高解像ですので、40M・50Mという高画素の画質をフルに引き出すことができます。

E-M5MarkII BLK right M1240 BLK

 OM-D E-M5 Mark II。小型軽量設計ながら、防塵防滴仕様の機動性の高いモデル。2015年2月発売。

OM-D E-M5 Mark II 製品情報


PEN-F-SLV right M12mmF2 BLK
PEN-F。レンジファインダースタイルの上質ボディが印象的な、20Mセンサー搭載モデル。2016年2月発売

PEN-F 製品情報

「ハイレゾショット」の使用感と効果

 1回のシャッターで8枚撮影されるハイレゾショットでは、必然的に“三脚の使用”が必須条件になってきます(各画面のズレを防ぐために)。また、“動きのある被写体には向かない”という制約もあります。これ以外にも、蛍光灯などの交流光環境ではフリッカー(ちらつき現象)の影響で解像しない、使用できる絞り値は開放からF8まで、シャッター速度は1/8000秒~8秒まで、ISO感度はISO LOW(拡張低感度)~1600まで、フラッシュ撮影はマニュアル発光(同調速度は1/20秒以下で8回発光。フラッシュ充電の関係で撮影時間は長くなる)、といった制約もあります。
ここからは、PEN-Fでの使用感を述べていきましょう(作例ではE-M5 MarkⅡも登場します)。ハイレゾショットへの設定は比較的簡単で、撮影メニュー内の「ハイレゾショット」の項目をOffからOnに設定するだけです。なお、実際には「On」という表示はなく、シャッター全押しから露出開始までの時間を設定することで設定状態になります。
ハイレゾショットは「撮影メニュー2」から設定。 ハイレゾショットは「撮影メニュー2」から設定。 シャッター全押しから露出開始までの時間設定は0秒~30秒の範囲内。 シャッター全押しから露出開始までの時間設定は0秒~30秒の範囲内。
ハイレゾショット撮影は、画質設定がJPEGモードでもRAW+JPEGモードでもおこなえます。JPEGモードで撮影すると、50MのJPEGが保存されます。RAW+JPEGモードで撮影すると、50MのJPEG、80MのRAW、20MのRAW、という3種類のデータが保存されます。そして、RAW+JPEGモードで撮影しておけば、後からカメラ内のRAW現像機能で80MのRAWデータから50MのJPEGに現像(新規のJPEGを作成)することも可能です。ちなみに、Olympus Viewer3をインストールしたPCを使用すれば、20MのRAW(通常撮影のデータ)の再生や現像が可能になります。
ハイレゾショットを設定すると、モニター画面の右端中央にアイコンで表示される。 ハイレゾショットを設定すると、モニター画面の右端中央にアイコンで表示される。 撮影後の画像処理中の表示。画面の左上には、メモリーカード書き込み中の表示(点滅)。 撮影後の画像処理中の表示。画面の左上には、メモリーカード書き込み中の表示(点滅)。
「撮影メニュー2」で一度ハイレゾショットを設定しておけば…… 「撮影メニュー2」で一度ハイレゾショットを設定しておけば…… LVスーパーコンパネやスーパーコンパネの「連写/セルフタイマー」の項目上でもハイレゾショットのOnとOffの切り替えが可能になる LVスーパーコンパネやスーパーコンパネの「連写/セルフタイマー」の項目上でもハイレゾショットのOnとOffの切り替えが可能になる
ハイレゾショットに設定してシャッターボタンを押すと、無音の状態で8回シャッターが切れ(自動で電子シャッターに切り替わるため)、その後にハイレゾ画像が生成されメモリーカードに保存される“待ち時間”が生じてきます。その待ち時間を計測すると、RAW+JPEGモードで約12秒、JPEGモードで約7秒、という結果でした(撮影条件やメモリーカードの違いなどで変わるでしょうが)。

ハイレゾショット撮影の実際

ここからは、PEN-FだけでなくE-M5 MarkIIも含めて、実写結果を見ていきましょう。

小物撮影

撮影:柳川勤

まず、E-M5 MarkIIでの小物撮影の結果です。望遠マクロレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」を使った万年筆の写真で、先端部のペン先にピントを合わせています。ちなみに、こういった小物のクローズアップ撮影では、近距離でも描写性能の高いマクロレンズと、正確なピント合わせが必要になります。そのペン先の部分を切り出して比較してみます。E-M5 Mark IIの場合、通常撮影では16Mになり、ハイレゾショットでは40Mの画像になるので、同じ範囲を切り出してもピクセル数は変わってきます。そこで、同じ範囲を切り出した40Mの画像を、16Mの切り出し部分と同じピクセル数(240×240ピクセル)にリサイズして、その描写を比較してみました。縦に伸びる切れ目や、左右の掘られた模様。ハイレゾショットからの切り出しの方は、こういった部分のエッジがより明確になっているのがわかります。
通常撮影 通常撮影  ハイレゾショット ハイレゾショット
部分切り出し:通常撮影 部分切り出し:通常撮影 部分切り出し:ハイレゾショット 部分切り出し:ハイレゾショット

風景写真の場合

 撮影:吉森信哉
次は、PEN-Fでの風景撮影の結果を見てみましょう。前述のとおり、ハイレゾショット撮影は“動きのある被写体には向かない”という制約があり、それは静的なイメージのある風景にも当てはまります。こういった屋外の自然風景だと、一見すると動きがないように思っても、微風による木の枝や草むらの揺れ、川や池などの水面の揺らめき、こういった微妙な動きがハイレゾショットの8枚撮影によって“不自然なズレ”となって現れるのです。
通常撮影 通常撮影 ハイレゾショット ハイレゾショット

動きの少ない被写体の場合

まずは、動きのない所の部分切り出しを比較してみましょう。ここでも万年筆の時と同様の方法で、同じ範囲を切り出した50Mの画像を、20Mの切り出し部分と同じピクセル数(240×240ピクセル)にリサイズして描写を比較してみます。50Mのハイレゾショットからの切り出し画像の方が、密集する木の葉の細部がより緻密に描写されています。
部分切り出し:通常撮影 部分切り出し:通常撮影 部分切り出し:ハイレゾショット 部分切り出し:ハイレゾショット

動きのある被写体の場合

では、今度は動きのある所の部分切り出しを比較してみます。ここでも同じ範囲を切り出しますが、ハイレゾショットによる描写の変化が見やすくなるよう、リサイズせずに掲載してみます。切り出したのは、日陰を背景にしたネムノキの枝で、風による揺れが見られる部分です。とはいえ、通常なら低速シャッター(1/30秒以下とか)でもない限りブレが目立つ事はないでしょう。ここでも「1/160秒」という十分な速度です。しかし、ハイレゾショットの8枚撮影の最中に風によるズレが生じ、合成処理の結果、その部分が低速ブレのような描写になっているのです。しかも、低速シャッター時のような被写体ブレではなく、まるでゼブラパターン(輝度オーバーによる白飛びが起きる範囲を示す、液晶モニター上の表示)のような規則的な斜め線が発生しています。
部分切り出し:通常撮影 部分切り出し:通常撮影 部分切り出し:ハイレゾショット 部分切り出し:ハイレゾショット

このように、より高解像な描写が得られるハイレゾショット機能ですが、撮影に際しては“画面内の動きの有無”に十分注意する必要があります。その注意は、オリンパスのウェブサイトの製品紹介などにも記載されているので、今回のような“水や風の影響を受ける風景撮影”で、その結果に対して不満を述べるのは少々筋違いかもしれません。ですが、他社製品の中には、同様の撮影方法で高解像画像を生成しながら、画面内の動きのある領域を検出して、その部分が不自然な描写にならないよう合成処理をおこなう、という機能を搭載するカメラも登場しています。そんな他社の動向も踏まえながら、オリンパス(株)のスタッフ陣に“ハイレゾショットの動体対応”の可能性を尋ねてみたところ、「この件に関しては、皆様のご期待に添えるよう、今後の課題として取り組みたいと思います」という回答を頂きました。今後のハイレゾショットの進化に期待したいところです。


次回予告

次回の写真豆知識は、引き続きオリンパス株式会社の協力で、フラグシップ機E-M1の深度合成機能についてのレポートを予定しております。