JPS展メルマガ特集「動物写真撮影で注意していること」山形豪

JPS展メルマガ特集「動物写真撮影で注意していること」山形豪

 
野生動物であれペットであれ、「動物写真」は読んで字の如く動くものを相手にするので、被写体をファインダーに捉えてシャッターを切るだけでも中々大変です。しかも撮り手には動物が好きでたまらない人が多いので、とりあえず被写体が写っているだけで満足してしまうケースも多く見受けられます。

自分のためだけの記録写真ならばそれもよいでしょう。しかしコンクールに応募するのであれば、写真は人に見てもらうことが前提の作品です。従って撮影=作品作りでなければなりません。

 

 

ここでは野生動物を撮影するにあたって、私が常々気をつけている点についてお話しします。

まずレンズの選択について。動物写真はとかく超望遠レンズ(長玉)を使う機会が多いジャンルです。かく言う私も500mm以上のレンズを多用します。特に巨大な超望遠レンズは自分の虚栄心をくすぐる効果もあるので、ついつい使いたくなってしまうのです。

ところがそうして長玉ばかりを使っていると、いつの間にか被写体を探して構図を決める際にも超望遠の画角でしか辺りを見ないようになり、それ以外の選択肢があることを忘れてしまいがちになります。私はこれを「長玉病」と呼んでいます。この病から脱却し、被写体だけでなく周りの風景などにも気を配った方が写真の幅は広がります。そこで私は長玉を使う際、必ず2台目のボディに焦点距離の短いズームレンズをつけて持ち歩くようにしています。

 

 

もうひとつは見逃されがちな「縦位置」構図です。人間の視界は横方向に広いため、カメラのファインダーも普通に構えた状態では横長の長方形なわけですが、哺乳動物や鳥類などを撮る場合、縦位置構図の方が収まりよいことが多々あります。

ところが被写体を目の前にチャンスを逃すまいとカメラを構えていると、つい縦位置のポテンシャルを忘れてしまいます。そこで常日頃、撮影をしていない時でも「この場面、縦位置だったらどんな風に見えるかな?」といったことを意識するようにしています。すると今まで気づかなかった「絵」が見えてくることがあるのです。その感覚や経験がいざという時に役に立ちます。

 

 

目の前に素敵な被写体がいて、素晴らしい場面が繰り広げられていたとして、その千載一遇のチャンスをしっかりと写真作品に落とし込むにはかなりの訓練が必要です。
そして撮影スタイルに対しても、ワンパターンになり過ぎてはいないか常に意識しておくことが大事だと思うのです。

 


山形豪(やまがた ごう)プロフィール

 

1974年群馬県生まれ。少年時代を西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。

高校卒業後、東アフリカのタンザニアに渡り自然写真を撮り始める。以来アフリカ各地で野生動物や風景、人物などの撮影を続けている。
また、写真撮影に特化したサファリツアーを企画し、自らガイドとして頻繁にアフリカを訪れている。

著書に『ライオンはとてつもなく不味い』(集英社新書)

写真集『From The Land of Good Hope』(風景写真出版)など。

ウェブサイト:www.goyamagata.com

日本写真家協会会員

 

写真展 

2023年1月20日〜2月2日「私たちのサファリ」山形豪と行く自然写真撮影ツアー グループ写真展 富士フォトギャラリー銀座・スペース0

2023年1月27日〜2月2日 GoWild: ボツワナ・マシャトゥの動物たち 富士フォトギャラリー銀座・スペース3