JPS展メルマガ特集「防水コンデジで撮ってみる」写真家 中村武弘

「防水コンデジで撮ってみる」写真家 中村武弘

デジタルカメラの時代となり、気軽に写真撮影を楽しめるようになりました。しかし、ハードルが高く、馴染みのない分野と思われがちなのが水中撮影ではないでしょうか。「防水ケースが必要」「水中に潜らなければいけない」というのが、水中撮影に対するイメージではないかと思います。
ダイビングやシュノーケリングで一眼カメラを使って撮影しようとすればその通りですが、それだけが水中撮影の方法ではありません。私はさまざまな角度からいろいろなカメラを使って海を撮影してきました。その経験から簡単に始められる水中撮影についてお話ししたいと思います。
 

 

はじめにお伝えしたいのは、撮影において重要なのは適材適所でカメラを選ぶことです。全てのシーンを撮影できるオールマイティーなカメラはありません。これからお話しするのは「防水コンパクトデジタルカメラ(略して防水コンデジ)でしか撮影できない水中撮影について」となります。

防水コンデジで水中撮影をする上で知っておいていただきたいのが「水中は見た目以上に光量が少ない」ということです。意図せぬシャッタースピードの低下やISO感度の上昇が起こり易く、ブレや画質低下の原因となってしまいます。

ここで重要なことはカメラの特性を理解し、防水コンデジ撮影に向いた被写体を見つけることです。カメラの性能が追い付かないものは無理に撮影せず、防水コンデジでなければ撮れない被写体を見つけてください。

 

 

私が撮影する場所で言えば、潮の干満によってできる磯の潮溜まりや干潟の浅い水中になります。狭い潮溜まりや浅い水中は、防水ケースに入れた一眼カメラでは大き過ぎて撮影できないことが多く、防水コンデジが大活躍します。

潮の引いた磯と干潟はフィールド上を歩くため、ウェットスーツなどの大袈裟な装備は必要ありません。事前に潮の干満をチェックし(春から夏の大潮や中潮が適しています)、濡れても良い格好で行きましょう。また濡れた岩場は滑り易いので注意してください。

 

 

山では川の撮影で防水コンデジが活躍します。海と違って濁りが少ない川の清流は防水コンデジに打って付けで、水中の奥行き感や水の流れを上手く表現することができます。フィールド以外でも水遊びをする子供や、雨や雪の中での撮影など、防水コンデジは濡れることを恐れず撮影でき、活躍場面はさまざまあります。防水機能は言い換えると密閉されている構造なので、砂埃が舞う中などでも臆することなく撮影できます。

コンデジの小さなセンサーサイズに不安を覚える方もいると思いますが、カメラの性能に見合ったものを撮影すれば問題はありません。条件がハマれば高精細な写真を撮ることができるのです。
ですが、ダイナミックレンジの狭いコンデジは明暗差の大きな場面に弱いため、撮影時にしっかりと露出補正を行って逆光の場面などで白飛びが起こらないように注意しましょう。

防水コンデジには一眼カメラにはない撮影表現が可能です。一味違った撮影を試みることで写真の幅が広がり、新たな世界が見えてくるかもしれません。

 



 
中村 武弘(なかむらたけひろ)

海洋写真家。1979年、東京生まれ。幼少期より海や自然に触れて育つ。

海中から海上までの自然を被写体とし、海を幅広く撮影する。誰でも行ける身近な海の環境に惹かれ、磯や干潟、マングローブ林の干潟は長年のテーマとしている。

また、水族館や船なども撮影し、ヘリコプターやセスナからの空撮も得意とする。

主な著書に『海』(私家版)、『いその なかまたち』(ポプラ社)

『しぜん ひがた』『しぜん たこ』(フレーベル館)、『沖縄美ら海水族館100』(講談社)

『干潟生物観察図鑑』(共著・誠文堂新光社)など。

共著を含め10冊以上の本を出版。子供向け生物図鑑などにも多くの写真を提供している。

 

個展

「小笠原への旅」(2016年)、「海って不思議」(2018年)、「東京湾の海」(2020年)、「海」(2022年)

海洋写真事務所(株)ボルボックスに所属。
 
中村武弘 写真集『海』のオンラインショップはこちら。

https://nakamuratake.base.shop/