2014年第10回名取洋之助写真賞受賞者発表

2014年第10回「名取洋之助写真賞」受賞作品展開催のお知らせ

2014年第10回「名取洋之助写真賞」受賞作品展開催

2014年 第10回「名取洋之助写真賞」受賞作品展を2015年1月30日(金)より開催します。
35歳までの”新進写真家の発掘と活動を奨励する”ために創設した「名取洋之助写真賞」2014年第10回の受賞作品展が東京・大阪で開催されます。
展示作品は「名取洋之助写真賞」の高橋 智史 「屈せざる女性たち・カンボジア―変革の願い」(カラー30枚)、「名取洋之助写真賞奨励賞」の中塩 正樹 「誇り高き祭り人 刻を紡ぐ」(カラー30枚)です。
入場無料

東京会場 富士フイルムフォトサロン東京/(フジフイルムスクエア
会期: 2015年1月30日(金)〜2月5日(木)
時間: 10:00~19:00(最終日は16:00)
主催: 公益社団法人日本写真家協会
協力: 富士フイルム株式会社/富士フィルムイメージングシステムズ株式会社
大阪会場 富士フイルムフォトサロン大阪/(富士フイルム大阪ビル1F
会期: 2015年2月20日(金)〜2月26日(木)
時間: 10:00~19:00(最終日は14:00)
主催: 公益社団法人日本写真家協会
協力: 富士フイルム株式会社/富士フィルムイメージングシステムズ株式会社

2014年第10回「名取洋之助写真賞」決まる

公益社団法人日本写真家協会が新進写真家の発掘と活動を奨励するために、主としてドキュメンタリー分野で活躍している35歳までの写真家を対象とした2014年第10回「名取洋之助写真賞」の選考審査会を、8月25日(月)JCII会議室で、鎌田慧(ルポライター)、大島洋(写真家)、田沼武能(写真家、公社・日本写真家協会会長)の3氏によって行いました。
応募者はプロ写真家から大学在学中の学生までの38名43作品。男性23人女性15人。カラー24作品、モノクロ15作品、混合4作品でした。
選考は1組30枚の組写真のため審査会場の制約もあり受付け順に8~9作品ずつ5回に分けて行い、第一次審査で23作品を選び、第二次審査で9作品が、第三次審査で5作品が残りました。最終協議の結果、下記に決定しました。

○三次審査通過者

高 興彬  「田舎医者」 
高橋 智史 「屈せざる女性たち・カンボジア―変革の願い」
帖地 洸平 「美しく時は流れて」 
石田 寛  「今の立ち位置から見えるもの。」
中塩 正樹 「誇り高き祭り人 刻を紡ぐ」

○最終審査通過者

高橋 智史 「屈せざる女性たち・カンボジア―変革の願い」
中塩 正樹 「誇り高き祭り人 刻を紡ぐ」

2014年第10回「名取洋之助写真賞」受賞

2014takahashi

高橋智史(たかはし さとし)
1981年秋田県生まれ。32歳。日本大学芸術学部写真学科卒業。
国際ジャーナリスト連盟(IFJ) IFJ-JAPAN freelance journalist unionメンバー。
フォトジャーナリスト。プノンペン在住。

高橋智史「屈せざる女性たち・カンボジア―変革の願い」受賞作品 「屈せざる女性たち・カンボジア―変革の願い」(カラー30枚)

作品について

30枚という応募作品の規定は、力量と集中力、テーマの深さと豊かさを要求するものであるが、受賞作品は、そのどれをも満たし、最後まで緊張感を失わない説得力のある作品である。作品のテーマは、不正と不義により奪われた自らの土地を取り戻そうと、命がけで闘うカンボジアの女性たちの姿とその願いである。現地カンボジアに拠点を構えた高橋氏の主題に密着した粘り強い撮影が、見る者の心を打つ記録となって実を結んだ。

受賞者のことば

名取洋之助写真賞を受賞することができ光栄に存じます。巨大な権力に屈することなく、当たり前の正義を掴み取るために命をかけて闘い続ける土地奪われし人々の姿、彼らの切なる願いを、このような形で多くの方々に伝えられることに、心からの喜びを感じます。私はこれからも、愛するカンボジアの大地に身を置き、人々の思いに寄り添いながら、彼らの命の尊厳を撮り続けていきたいと思います。

2014年第10回「名取洋之助写真賞奨励賞」受賞

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中塩正樹(なかしお まさき)
1984年 大阪府生まれ。30歳。2008年3月 大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業
2008年 第55回JPC全国写真展内閣総理大臣賞受賞。
2010年 第6回名取洋之助写真賞奨励賞受賞。現在フリーで活動中。奈良県在住。

中塩正樹「誇り高き祭り人 刻を紡ぐ」受賞作品 「誇り高き祭り人 刻を紡ぐ」(カラー30枚)

作品について

中塩氏の作品は、第6回名取洋之助写真賞奨励賞の受賞作品と同様に作者の地元である奈良各地の祭りを捉えたものである。しかし、前回の受賞作品より、確実に技量、完成度とも高まり、格調ある作品に仕上がっている。決して有名ではない、しかしその土地に生きる人々と先祖の思いを伝える祭りの本質を豊かに感じさせる作品である。

受賞者のことば

第6回の奨励賞に続き今回、第10回名取洋之助写真賞奨励賞を頂き有難うございます。祭事や伝統行事に携わる祭り人の想いや魂という、目に見えないものを、写しとりたいという挑戦を続けています。祭事や伝統行事の今後を思いながら、未だ道半ばですが、今回の受賞を励みとして尚一層の努力を重ねていきたいと思っています。有難うございました。

<2014年第10回「名取洋之助写真賞」総 評>

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選考風景(平成26年8月25日 JCII会議室 撮影・小城崇史)

 

田沼 武能(写真家・公益社団法人日本写真家協会会長)

 

2014tanuma名取洋之助写真賞は30枚の組写真で構成しなければならない。選ぶテーマによっては30枚にならないものがある。20枚で終ってしまうものを30枚にするのには無理があり、内容が希薄になる。そんな作品が何点か見られた。テーマを選ぶところから作品作りが始まることを考えて頂きたい。
名取洋之助写真賞を獲得した高橋智史氏は、大学在学中からアジア社会に注目し、カンボジアを始めアフガニスタン、東ティモール、ラオス、ベトナムなどを取材し、メディアに提供している。卒業後は拠点をカンボジアのプノンペンに移し、本格的にフォトジャーナリストとして活躍しており、すでに国際ジャーナリスト連盟日本賞・大賞などを受賞している。昨年の名取賞にはカンボジア・トンレサップで撮影した「湖上の命」を出品したが、もう一歩のところで賞を逃している。
今回は、カンボジアの女性をテーマに「屈せざる女性たち・カンボジア-変革の願い」を出品した。そこにはカンボジアの女性たちが、生きるための権利、生活のための場を獲得するために闘い続けており、そのバイタリティを中心に、カンボジア社会、政権の汚職、不正など歪み、腐敗する社会の中で生きる権利を得るために身体を張って闘う女性たちの現場に深く入り込み密着取材した力作である。そこにはプノンペンに住み、カンボジア社会を知り取材を重ねている成果が如実に出ており、またストーリーの構成、ドラマチックな表現は緊迫力ある作品に仕上げている。まさに名取洋之助の写真賞にふさわしいドキュメント作品である。
奨励賞となった中塩正樹氏の「誇り高き祭り人 刻を紡ぐ」は、第6回名取洋之助写真賞奨励賞を受賞しており、その第2弾とも言える作品である。第1弾より洗練された造形力、表現力、日本の伝統文化として内容の深さを感じる作品である。しかし、名取洋之助写真賞の持つ社会性を鑑みて奨励賞に選ばれた。

大島 洋(写真家)

 

2014ohshima今年度応募された43作品のレベルは前年度と同様に総じて高く、その半数以上の作品が第一次選考をクリアした。その結果、名取洋之助写真賞は高橋智史さんの「屈せざる女性たち・カンボジア─変革の願い」に、奨励賞は中塩正樹さんの「誇り高き祭り人 刻を紡ぐ」に決まった。高橋さんは本賞の前年度第9回と第7回にも最終選考まで残り、そのドキュメントは強く記憶に刻まれているし、中塩さんは第6回にも奨励賞を受賞していて、共にぶれることなく自らのテーマを貫いてきていることを再確認することができる。
高橋さんの作品は、カンボジア・プノンペン市内のボレイ・ケイラ地区の女性たちが、住まいとなるべきアパートの建設を巡って、汚職と不正が蔓延する行政や開発業者らと対峙し、命を張って抗議活動する姿を見つめ続けた心打つ記録である。この10年間、カンボジアを中心に東南アジアのさまざまな社会問題に関心を寄せ、ことに2007年からはプノンペンに生活と活動の拠点を移して集中的に取材を重ねてきた高橋さんだからこそ成しえた時間の厚みであり、質の高さであると思う。
中塩さんの作品は、そのタイトルのように、長い歴史とともに時を紡いできた小さな町や村の人々が守り続けてきた祭りの原形が、とても格調高い作品として組み上げられています。それぞれの写真の完成度も高く、30枚が緻密に構成されています。過疎と高齢化が急速に進行し地域社会の崩壊と直面する山あいの人々の生活や文化の現況への強い思いが背景としてあることも確かに伝わってきます。 

鎌田 慧(ルポライター)

 

2014kamataこの列島のどこかで、数多くの若きカメラマンたちが、名取洋之助賞を目指して、取材を進めながら、自分のテーマを掘り下げている。その姿を想像すると尊いものに思えて、選者として身の引き締まる思いにさせられる。今年も捨てがたい作品が多かった。
受賞作品高橋智史の「屈せざる女性たち・カンボジア-変革の願い」には、意表を衝かれる思いをさせられた。これまでもカンボジアのゴミ捨て場の写真集を見ていて、社会的不公平の激しさを知らされたが、政府と対峙し弾圧されている住民運動があるのを、私は不明にして知らなかった。住宅を求める女性たちの必死の運動に寄り添うように、写真を撮っているのがよくわかる。
 同情とはちがう、社会の不条理を感じさせられた。ポル・ポト政権下でどれだけの人たちが殺戮されたことか。その体制が崩れてなお、ひとびとはいまだに苦しんでいる。あの野積みされたしゃれこうべの堆積や刑務所に使われた校舎の独房跡、首吊り台にされたブランコの梁などの記憶に、デモの先頭を征く女性の悲しげなメーキャップが重なって見える。民衆の悲しみはいつまで続くのか。
奨励作 中塩正樹の「誇り高き祭り人 刻を紡ぐ」は、造形力が適格で端正で静謐。祭りを支えてきた地域の伝統の力と市井人の日常から脱却した瞬間がよく捉えられている。このような人間の精神性の高みが映し出されているのは、ひとびとへの崇拝の念なくしてできるものではない。