サンディスクに訊く プロ写真家が使うメモリーカードの豆知識 第2回

第2回 カードラベルの見方/カードを選ぶポイント

デジタルカメラが普及してカメラの持つ記録性を支えるフィルムはメモリーカードへと代わりました。フォトグラファーが安心して使えるメモリーカードの種類はフィルムの種類よりも多く形は同じでも、その性能はかなり違っています。今回はメモリーカードのシェアでナンバーワンのサンディスク株式会社の羽田野恵美氏、長谷川史子氏からお話を伺いました。

カードラベルの見方

カード本体上の表記

コンパクトフラッシュ

コンパクトフラッシュ カード本体上の表記■最大転送速度(読取りスピード)
読取り最大転送速度。速いほどパソコンへのデータ転送が速い。
■UDMA対応マーク
UDMAはウルトラダイレクトメモリアクセスの略で、UDMAのどの規格に対応するカードであるかのマーク。
UDMA6の最大転送速度は133.3MB/sに対してUDMA7は167MB/s。
■VPG(Video Performance Guarantee)
最低持続書き込み速度、動画記録規格の表記。
 
 


 SDカード
SDカード カード本体上の表記■カードタイプ
容量による規格であるSD、SDHC、SDXCのどのタイプであるかの表記。
■UHSインターフェース
UHS-IとUHS-II、二つのどちらの規格であるかの表記。写真や動画を読み書きする際のデータの通り道の規格。
UHS-I 104MB/s / UHS-II 312MB/s
■スピードクラス
Class 2 2MB/sec、Class 4 4MB/sec、Class 6 6MB/sec、Class 10 10MB/sec、いずれのスピードクラスに対応しているかの表記。動画撮影に必要な「最低保証速度」の規格。
■UHSスピードクラス
UHSスピードクラス1および3、どちらに対応しているかの表記。UHSスピードクラスとは、SDHC/SDXCカードの動画撮影のデータ読み書き速度の規格
■最大転送速度(読取りスピード)
読取り最大転送速度。速いほどパソコンへのデータ転送が速い。

製品パッケージ上の表記

コンパクトフラッシュとSDカード 製品パッケージ上の表記最大転送速度

■読取り速度
読取り最大転送速度。速いほどパソコンへのデータ転送が速い。

■書込み速度
書込み最大転送速度。速いほどカメラの連写性能が速くなる。
 
 

カードを選ぶポイント

メモリーカードの種類を確認する

どのメモリーカードを使うのかはカメラ側で決まっていますので、自分のカメラのカードがどれ(CF、SD、XQD、CFast等)なのかを確認する必要があります。ただ、ホスト(カメラ)側には(どのようなカードを使用するかという)規格ロゴがついていないため、必ず説明書で確認してください。また、同じ種類のカードであっても使用するカメラによって対応する最大容量が違う等の互換性の問題もありますので、これも説明書で確認するようにしてください。

カメラの対応画素数によってカードの容量を決める

サンディスク(株) 長谷川史子氏

サンディスク(株)
長谷川史子氏

カメラの対応画素数がメモリーカードの容量を決めるポイントとなり、カメラの画素数が大きいほど大容量のカードが必要となります。動画を撮る場合には静止画よりもさらに大容量のカードが必要です。
万一のカード事故のリスクに備えて複数枚の少ない容量のカードを使う写真家がいらっしゃるのですが、フラッシュメモリーの特性上、同じ8GBのデータを読み書きさせるのであれば、大容量の記録メディアで余裕をもたせて使用した方が単位セル辺りの書き込み回数が少なくてすむため、カードとしての寿命は長くなるという特徴があります。
現在、SDカードは販売の中心が16GBとなっていますので、最低でも16GB、出来れば32GBがおすすめです。

Q:長期間使用するとメモリーカードの容量が減少してしまうということを聞いたことがあるのですが?
A:今回取り上げているデジタルカメラで使用するメモリーカードを含めたフラッシュメモリーにはその特性上、どのメーカーのカードでも書込み回数などに制限があります。カードには特定のメモリーセルに書込みが集中しないようにしたり、損傷したメモリーセルを回避するなどの仕組みが搭載されていますが、長期間に渡り大容量のデータを読み書きしていると、いずれは容量が低下してしまうことがあります。メモリーカードは消耗品であるということを認識した上で使用するようにしてください。
Q:よくメモリーカードに画像を入れたまま保存している人がいるのですが?
A:メモリーカードの中に長年にわたりデータを保存したままにしておくことは安定性の観点からお薦めしません。データの保持期間には限りがあるため、定期的に安全な場所に移していただきたい。

書込み速度、データ転送速度、互換性・信頼性でカードを選ぶ

サンディスク(株) 羽田野恵美氏

サンディスク(株)
羽田野恵美氏

メモリーカードの性能を決める三大要素

1.撮影速度(主に書込み速度)

・書込み速度(書込み最大転送速度)が速いほどカメラの連写性能が速くなる。

・写真の場合と動画の場合では書込み速度の指標が違う

・書込みスピードが遅いと撮影後、すぐにに次のシャッターが切れない、連写が途中で途切れる

・ハイスペックのカメラを使う場合ほど高速のカードが必要

2.パソコンへのデータ転送速度

・読取り速度(読取り最大転送速度)が速いほどパソコンへのデータ転送が速い。

3.互換性・信頼性

サンディスクはメモリーの専業メーカーで、メモリーの制作からメモリーカードの制作、販売まで一貫して行っている企業で、メモリーカードのシェアが世界一。シェアが多いことは互換性や信頼性のテストを毎日毎日行われているということになり、それだけフィードバックが多く互換性、信頼性が向上する一因ともなっています。

Q:エクストリーム以上では永久保証と書かれていますが、画像データに対しても保証されるのでしょうか?
A:データの保証はできません。エクストリーム以上にはデータ復旧ソフトが添付されていますが、画像復旧は各自の責任でお願いします。エクストリーム以上ではメモリー本体に対して永久保証となっていますが、保証を受けるには保証書と購買履歴が必要となります。並行輸入品は偽造品が多いため保証対象外とさせていただいております。
Q:カードにデータを書き込むとき、カードの頭から順に書き込むのですか?
A:データの書き込みはコントローラーがコントロールするので同じところを書き込むということにならないようにしています。どれだけ優秀なコントローラーを搭載しているということもメモリーカードの性能にも響きます。

スピードクラスとUHSスピードクラス

Q:SDカードを購入する際、スピードクラスというものが書かれていますが、これはなんでしょうか?
A:最大転送速度には「書込み速度」と「読取り速度」がありますが、写真の連写性能を左右するのは「書込み速度」となり、動画をスムーズに撮影するために規定されている「スピードクラス」は静止画の撮影には関係ありません
ただ「書込み速度」や「読取り速度」を公表していないメーカーが多いため、スピードクラスを見てしまう方が多いようです。しかし、スピードクラスは最低保証レートの数値であって最高速度とは違うため正確な「書込み速度」ではありません。
スピードクラスの表示(表1)

スピードクラスの表示(表1)

スピードクラス

スピードクラスで規定されているのは動画撮影時の最低保証速度(表1)ですが、最大速度は各メーカー、各カードによって違います。カメラのマニュアルに最低限このクラス以上のメモリーカードを使ってくださいと書かれていますので、必ず説明書を確認し、動画が途切れないようにカメラ側が要求するスピードクラスのカードを使用してください。
スピードクラスには(表1)のようにClass 2 2MB/sec、Class 4 4MB/sec、Class 6 6MB/sec、Class 10 10MB/secが規定されています。

UHSスピードクラス

UHSスピードクラスとは、SDHC/SDXCカードの動画撮影のデータ読み書き速度の規格で、1および3が規定されています。

UHS(Ultra High Speed)規格

写真や動画を読み書きする際のデータの通り道に高速バスインターフェースを採用し、より高速な撮影やデータ転送を可能にする規格。いわば「一般の道路が車線の多い高速道路やサーキットになった」ようなもの。

Q:写真家としては今後のためにUHS-II対応カードを買っておけば安心ですか?
A:UHS-II対応のカメラでUHS-II対応のカードを使う限りでは最高のパフォーマンスを発揮できますが、UHS-I対応のカメラでUHS-II対応のカードを使うよりもUHS-I対応のカード使った方がパフォーマンスが出るケースがありますので、最適な組み合わせで使う必要があります。

UHS非対応、UHS-IとUHS-IIの違い

UHS非対応 25MB/s 一般道のようなもの
UHS-I 104MB/s 高速道路のようなもの
UHS-II 312MB/s サーキットのようなもの(接点が多い)

現時点では多くのカメラではUHS非対応もしくはUHS-I対応のどちらかが多いのですが、UHS-II対応カメラ下記のカメラに限られています。

UHS-II対応カメラ(2015年10月現在)

Fujifilm XT-1
Olympus OM-D EM-5 Mark II
Panasonic Lumix DMC-G7
Samsung NX1

バスインターフェーススピード

バスインターフェース カードタイプ バスマーク バス スピード 仕様バージョン
ノーマルスピード SD, SDHC
およびSDXC
12.5MB/s 1.01
ハイスピード SD, SDHC およびSDXC 25MB/s 2.00
UHS-I SDHCおよびSDXC 50MB/s (SDR50,DDR50)
104MB/s (SDR104)
3.01
UHS-II SDHCおよびSDXC 156MB/s
312MB/s
4.00

バスインターフェースの表示(表2)

※表の引用元:SDアソシエーション

見逃されがちな不安定電源によるトラブル

これまでメモリーカードの選び方について述べてきましたが、意外に見逃されがちなのがカメラのバッテリー容量低下によるトラブルです。カメラのバッテリーが低下すると電流供給が不安定になり、メモリーカードへの書込みも不安定となるため、カード本体やコントローラー壊してしまうリスクが増えてしまいます。撮影の際には十分な容量のバッテリーを使用し、バッテリーが低下し始めたら予備のバッテリーに早めに交換することを忘れないようにしてください。

 

 

撮影と文:加藤雅昭
協力・画像提供:サンディスク株式会社