富士フィルムフォトサロン東京で開催された、第19回「名取洋之助写真賞」受賞作品 写真展をVRにてご覧いただけます。
第19回名取洋之助写真賞 受賞作品「東京オアシス」
藤原 昇平(ふじわら・しょうへい)
1987年 京都府生まれ。37歳。
2012年 立教大学社会学部卒業。
2013年から2018年まで、神戸新聞社にて記者として勤務。
2018年 同社退職後、日本写真芸術専門学校でドキュメンタリー写真を学ぶも中退。
現在、会社員として働きながら、写真制作をライフワークとして続けている。
2019年 『週刊文春』6月13日号に「戸山ハイツ」のルポを寄稿。
同年10月及び11月、銀座ニコンサロン、大阪ニコンサロンで「東京オアシス」の個展を開催。東京都在住。
作品について
東京都新宿区にある老朽化したマンモス団地である都営住宅「戸山ハイツ」は、鉄筋コンクリート造りの35棟に約3,300世帯5,600人が暮らしている。高齢化率は56%で“都会の限界集落”としてメディアでも取り上げられるため、住民たちは取材を歓迎しない。2018年春、はじめて団地を訪ねた時は、断られ続けたが、部屋の外でポートレート写真を撮ってプレゼントし続けることで、次第に取材を許されるようになり、住民たちの井戸端会議などにも参加するようになった。新型コロナウイルス感染症の蔓延により、住民たちの環境は変化したが、近所付き合いや助け合いは続いている。この団地には時代が移り変わっても変わらずに在り続けるものがあることを伝えた作品。
受賞者のことば
名取洋之助写真賞を受賞し、大変光栄に思います。2018年から都営住宅「戸山ハイツ」に通い続け、コロナ禍で撮影が困難な時期もありましたが、住民の皆様は常に温かく迎え入れてくれました。高齢化が進む日本の縮図である戸山ハイツは、メディアではネガティブに描かれることが多いですが、ポジティブな視点で捉えることは若い世代に「希望」をもたらす重要な意味があると考えています。歳を重ねることを前向きに受け入れる社会を願い、今後も撮影を続けていきます。
第19回名取洋之助写真賞奨励賞 受賞作品「赤き星が落ちた世界 ソビエト連邦崩壊の残響」
星野 藍(ほしの・あい)
福島県生まれ。
デザイナー・アートディレクターの会社員として勤務するかたわら、旧ソ連構成国、旧ユーゴスラビア構成国など、旧共産圏の痕跡を主に写真として残している。APAアワード2024金丸重嶺賞受賞。著書として『旧共産遺産』『未承認国家アブハジア』『幽幻廃墟』などがある。
作品について
従姉の自死をきっかけに日本中の廃墟写真を撮り始めた。廃墟に感じた感覚は従姉の死と強く重なった。私的備忘録の写真が、2011年3月の東日本大震災で流転した。故郷福島がかつてのチェルノブイリのような廃墟の街になってしまうかもしれない、と当事者意識の感情を抱き2013年11月、実際に渡航。旧ソ連各地に残る“失われたユートピア”に興味を抱き、強くひきつけられた。多くの人が希望を抱いた共産主義も終わり、叶わぬ楽園の見た夢の跡、赤き恒星の終焉は廃墟として残された。廃墟とは物言わぬからこそ雄弁に現実を語り、時として人間より饒舌だ。「廃墟とは、無機物の群像劇である」との思いで撮った作品。
受賞者のことば
この度は名取洋之助写真賞奨励賞を受賞できたこと嬉しく思います。
極東島国では目にすることができない旧ソ連各地に残る「失われたユートピア」に興味を抱き、強くひきつけられ気が付けば十年以上が経ちました。
廃墟とは物言わぬからこそ雄弁に現実を語り、時としてそれは人間よりも饒舌であると感じます。そして一人一人がそれぞれのドラマを持つ無機物の群像劇のようにも見えます。
好奇心がついえぬ限り私の旅は続くでしょう。
受賞作品展
2025年1月17日(金)~1月23日(木) 富士フイルムフォトサロン東京
2025年2月28日(金)~3月6日(木) 富士フイルムフォトサロン大阪