【受賞の言葉】
誰もやったことのないことをやってみたい。出来ることなら誰も撮っていないものを撮ってみたい。一般の人が立ち入ることのできない場所に行き、まだ見ぬものを撮影するとともに、新たな価値観を提示するのが写真家の使命だと思っていたからだ。ただ、自ら求めたことなのに、道なき道とは、こんなにも大変だったとは…。今回の受賞は、一筋の光明であり、今までの活動が間違っていなかったと背中を押していただいたような心持ちだ。推薦してくださった方、選んでくださった方。そして、私の活動を応援し、関わってくださった全ての方々に、感謝の気持ちで一杯だ。ありがとう!
【第8回笹本恒子写真賞 受賞理由】
廃炉作業中の福島第一原子力発電所やJAXA(イプシロンロケット開発と打ち上げ)、大規模地下工事現場など撮影許可がおりにくい場所で長年撮影してきた姿勢と継続性、作品の完成度の高さに対して。
第8回 笹本恒子写真賞受賞記念展 西澤 丞 写真展「超現実世界」
会 期:2025年12月18日(木)~24日(水)
時 間:10:00~18:00(日曜休館、最終日15:00まで)入場無料
会 場:アイデムフォトギャラリー「シリウス」
住 所:東京都新宿区新宿1-4-10 アイデム本社ビル2F
ウェブサイト:https://www.photo-sirius.net/
主 催:公益社団法人 日本写真家協会

選評
誰も見ない場所、見れない場所を魅力的なビジュアルで写しだす。唯一無二の表現は見るものすべての心をつかむものになっている。熊切大輔(写真家)
長く取り組んできて写真集にもまとめている、福島原発の廃炉作業であるが、さらに困難を極めるであろう終わりなき廃炉工程を、独自の美意識と感性で深掘りされていくことを大いに期待している。野町和嘉(写真家)
西澤さんの写真が、現実を伝えるだけでなく、未来の可能性と危うさを暗示する力を持つのは、彼の写真を通して、私たちの時代の構造が垣間見えるからにほかならない。佐伯 剛(編集者)
西澤 丞 プロフィール

撮影 : 西澤 春美
「見えない仕事を、可視化する。」というコンセプトのもと、大企業から職人さんまで、一般の人が立ち入ることのできない現場を撮影中。コロナ以降は文章にも力を入れ、よりわかりやすい形での発表を行っている。自動車メーカー
デザイン室、撮影プロダクション勤務を経て2000年よりフリー。
愛知県出身、群馬県在住。
主な著書物
「DEMIURGOS」キヤノンマーケティングジャパン
「福島第一 廃炉の記録」みすず書房
「MEGA-SHIP」太田出版
「鋼鉄地帯」太田出版
「イプシロン・ザ・ロケット」オライリー・ジャパン(共著)
「Build the Future」太田出版
「背景ビジュアル資料3」グラフィック社
「首都高山手トンネル」求龍堂
「Deep Inside」求龍堂
【笹本恒子写真賞について】
わが国初の女性報道写真家として活躍された笹本恒子氏(1914~2022)の多年にわたる業績を記念して、実績ある写真家の活動を支援する「笹本恒子写真賞」を平成28(2016)年に創設。選考委員は佐伯剛(編集者)、野町和嘉(写真家・日本写真家協会前会長)、熊切大輔(日本写真家協会会長)(敬称略)。

笹本恒子(ささもと・つねこ)略歴
笹本恒子氏は1914(大正3)年東京生まれ。画家を志してアルバイトとして東京日日新聞社(現毎日新聞社)で、紙面のカットを描いていたところ、1940(昭和15年)財団法人写真協会の誘いで報道写真家に転身。日独伊三国同盟の婦人祝賀会を手始めに、戦時中の様々な国際会議などを撮影。戦後はフリーとして活動をし、安保闘争から時の人物を数多く撮影。JPS創立会員。写真集の出版、執筆。写真展、講演会等で活躍した。JPS名誉会員、2022年8月15日老衰にて逝去。107歳。
受賞歴
1996年東京女性財団賞、2001年第16回ダイヤモンド賞、2011年吉川英治文化賞、日本写真協会功労賞、2014年ベストドレッサー賞特別賞受賞。
2016年写真界のアカデミー賞といわれる「ルーシー賞」(生涯にわたる業績部門)受賞。
