JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.13 杉木直也」
杉木直也(すぎき・なおや 1930-2009年)
北海道出身で、戦後日本の近代広告写真や商業写真を牽引しました。大型ストロボを日本で初めて使用するなど、技術的な革新をもたらしました。特にコカ・コーラの広告撮影では、独自のライティング技術を駆使し、高い評価を得ています。1968年にはニューヨークへ進出し、1970年大阪万国博覧会ではチーフカメラマンを務めるなど、国内外で活躍しました。また広告写真家でありながら企画・演出・コピーライティングから映像制作まで幅広く手がける珍しい存在でした。操上和美などの後進の育成にも力を注ぎ、多くの著名なカメラマンに影響を与えました。
JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.12 田中光常」
田中光常(たなか・こうじょう 1924-2016年)
日本を代表する動物写真家です。静岡県出身で北海道大学水産学部に進学し、1958年から動物写真家として活動を開始。北極や南極などで動物写真を撮り、日本の動物写真の先駆けとなりました。撮影地は地球全土に渡り、代表作に「世界野生動物記」や「動物カメラ絵本」があり、著書は100冊以上に及びます。また、自然保護活動にも尽力し、日本パンダ保護協会会長や世界自然保護基金(WWF)日本委員会評議員を歴任しました。その功績が認められ、紫綬褒章や旭日小綬章を受章しています。星野道夫は田中の3番目の助手でもあります。
JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.11 髙村規」
髙村規(たかむら・ただし 1933-2014年)
東京都出身、彫刻家高村光太郎を伯父に持つ芸術家一家の出身で、広告やファッション写真のほか、高村光太郎や智恵子夫妻、父・豊周、祖父・光雲の作品を撮影することをライフワークとしました。日本大学芸術学部卒業後、筑摩書房で活動し、フリーランスとして幅広い分野で活躍。また、日本広告写真家協会会長や金沢美術工芸大学講師など業界団体や教育にも尽力しました。髙村の代表作には、写真集『高村光太郎彫刻全作品』や『木彫 髙村光雲』が挙げられます。また、『高村光太郎 美に生きる』や『智恵子 その愛と美』などの関連書籍も評価されています。これらの作品を通じて、高村光太郎や智恵子、髙村光雲の芸術を世の中に広く紹介しました。
2004年に旭日小綬章を受章されました。
JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.10 林忠彦」
林忠彦(はやし・ただひこ 1918–1990年)
山口県徳山市(現・周南市)出身。戦後の日本社会や文士たちの肖像を撮影し、特に太宰治や坂口安吾など「無頼派」の作家たちを写した作品で知られています。1946年に銀座のバー「ルパン」で撮影した太宰治の写真は、彼の代表作として有名です。また、戦後の混乱期に街頭や人々の日常を捉えた写真や、日本国内外の風景も手がけました。1955年にはアメリカを訪れ、そのスナップ写真も評価されています。作品はストーリー性が特徴で、文士たちの個性や時代の空気感を豊かに表現しています。林忠彦賞は彼の功績を称え、1991年に創設されました。1989年に勲四等旭日章を受章しています。
JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.9 佐藤明」
佐藤明(さとう・あきら 1930-2002年)
東京都出身で、横浜国立大学経済学部を卒業後、フリーランスの写真家として活動を開始しました。1959年には奈良原一高や東松照明らとともにセルフ・エージェンシー「VIVO」を結成し、新感覚のアート写真を追求しました。彼の作品はファッション写真や女性をテーマにしたシリーズが多く、1960年代には「冷たいサンセット」や「おんな」などが話題となりました。また、北欧やフィレンツェなど海外の風土をテーマにした作品も手がけています。主な受賞歴には1966年の日本写真批評家協会作家賞や1998年の日本写真協会年度賞があります。代表作に「女」(1971年)、「フィレンツェ」(1997年)、遺作となった「プラハ」(2003年)などがあります。
JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.8 田沼武能」
田沼武能(たぬま・たけよし 1929-2022年)
日本を代表する写真家の一人です。東京都出身で、東京写真工業専門学校(現東京工芸大学)を卒業後、1949年にサン・ニュース・フォトスに入社し、木村伊兵衛に師事しました。1959年からフリーランスとなり、世界の子どもたち、人間のドラマ、武蔵野、文士・芸術家の肖像などをライフワークとして撮影し続けました。2003年文化功労者、2019年には写真家として初めて文化勲章を受章しました。田沼は日本写真家協会会長や日本写真著作権協会会長を務め、写真界に大きな影響を与えました。その作品は人間性豊かで、社会的にも高く評価されています。
JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.7 岩宮武二」
岩宮武二(いわみや・たけじ 1920-1989年)
鳥取県米子市で生まれました。少年期から写真に興味を持ち、戦後にフリーカメラマンとして活動を始めました。代表作には「佐渡」、「京 Kyoto in KYOTO」、「宮廷の庭」シリーズなどがあり、これらの作品で毎日芸術賞や芸術選奨文部大臣賞を受賞しています。岩宮の写真は、日本の伝統的な美しさを捉えたものが多く、特に京都の庭園や仏像を題材にした作品が知られています。2020年、生誕100年を記念して東京、大阪、そして出身地の米子市で回顧展が開催され、その功績が改めて評価されました。岩宮の作品は現在、大阪府、東京都写真美術館、鳥取県立博物館などに収蔵されています。
JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.6 今井寿恵」
今井寿恵(いまい・ひさえ 1931-2009年)
競走馬の写真で知られる写真家です。文化学院美術科を卒業後に写真家として活動を開始し、1956年に初個展「白昼夢」を開催。交通事故を機に競馬写真に転向し、ニジンスキーなどの名馬、サラブレッドを撮影しました。作品は詩的かつ幻想的で、競馬写真界に多大な影響を与えました。2009年度JRA賞馬事文化賞功労賞を受賞しています。
JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.5 渡辺義雄」
渡辺義雄(わたなべ・よしお 1907-2000年)
新潟県三条町で生まれた日本の写真家です。東京写真専門学校を卒業後、戦前はライカなどの小型カメラを使用したスナップ写真で著名となりました。戦後には大型カメラを使用した建築写真の第一人者として日本写真家協会の会長を務め、写真文化の発展に尽力しました。伊勢神宮の式年遷宮を3回にわたって撮影した「伊勢神宮」シリーズが代表作として知られています。1990年には写真家として初めて文化功労者に選出されました。
JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.4 栗林慧」
栗林慧(くりばやし・さとし)
1939年、満州国(現在の中国藩陽)生まれ、長崎県出身の生物生態写真家です。昆虫を中心とした独創的な撮影技術で知られ、「虫の目レンズ」や、飛び出す花粉などの1/50000 秒の高速度撮影システムを開発しました。数々の賞を受賞し、2006年にはレナート・ニルソン賞を獲得。NHK番組制作にも貢献し、写真集やDVDを多数出版しています。現在も新たな撮影技術に挑戦し続けており、国際芸術展にも作品を提供しています。
JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.3 細江英公」
細江英公(ほそえ・えいこう 1933-2024年)
日本を代表する写真家、芸術家。山形県に生まれ、東京写真大学(現・東京工芸大学)を卒業後、写真家として活動を開始しました。特に三島由紀夫を被写体とした「薔薇刑」や、舞踏家・土方巽を被写体とした「鎌鼬」、肉体美をテーマにした「おとこと女」などで広く知られています。独自の美学と前衛的・独創的な視覚表現は、国際的に高い評価を受けています。また、写真教育者としても活躍し、多くの後進を育てました。
JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.2 奈良原一高」
奈良原一高(ならはら・いっこう 1931-2020年)
日本を代表する写真家で、福岡県生まれ。中央大学法学部卒業後、早稲田大学大学院で美術史を専攻しました。1956年に初個展「人間の土地」でデビュー後、「王国」シリーズやヨーロッパ滞在中に制作した写真集「ヨーロッパ・静止した時間」などで高い評価を得ています。哲学的な視点から空間や孤独などをテーマに、戦後日本の新しい写真表現を切り開きました。紫綬褒章など多くの賞を受賞し、国際的にも再評価されています。
JPS「昭和の写真家ライブラリー Vol.1 土門拳」
土門拳(どもん・けん 1909-1990)の撮影風景です。
本動画は、1978年に開催されたJPS展で会場放映するために収録されたものです。
土門拳は山形県酒田市出身の写真家で「写真の鬼」と称されました。
報道写真家として活躍し、『ヒロシマ』『筑豊のこどもたち』など社会性の高い作品を発表。
また、日本の古寺や仏像を撮影した『古寺巡礼』シリーズはライフワークとして知られています。
リアリズムを追求し、「絶対非演出」の信念を貫きながら戦後日本を代表する存在となりました。彼の作品は現在、酒田市の土門拳記念館に収蔵されています。
JPS「昭和の写真家ライブラリー」シリーズの公開にあたって
出版広報委員会担当 専務理事 小池良幸
当協会では、貴重な写真家の業績記録、資料収集を目的として、1970年から1999年まで声と映像による企画「声のライブラリー」を実施してきました。これは、写真家本人に直接お会いして創作活動や写真論などを話していただいた、本人の肉声を収録したものです。現在においてこのインタビューに登場した写真家の大半の方々は他界され、再び写真家本人からお話をうかがうことはできません。
今回、主に磁気テープ素材(カセットテープ、VHS)や8mmフイルムを使用して記録されたものをデジタル化、記録媒体の入れ替え作業をしました。これらの貴重な記録を新たに公開し、 後世に伝えることで、 これから写真を学ぶ人たちの学習や教育にも役立てたいと考えます。
この度、デジタルデータ化した中からご遺族より許諾をいただきました写真家の動画に編集を加えてJPS「昭和の写真家ライブラリー」シリーズを制作しました。8mmフイルムに記録された17名の著名な写真家の生の声や撮影現場の状況が伝わる貴重な資料として、JPS公式YouTubeチャンネルに公開いたします。
初回「Vol.1 土門拳」のあと、順次写真家の動画を公開する予定ですのでお楽しみに。
また協会では、写真家の土門拳や木村伊兵衛、渡辺義雄ら42人の録音の要約(ダイジェスト版)を、その当時の当協会発行誌に掲載しました。その該当ページをPDF化した冊子「声のライブラリーダイジェスト版」《後世に残したい写真家のインタビュー記事》を制作し、写真学校を始め、図書館、美術館等の関係団体に贈呈し、広く活用していただいています。
なお、この動画のデジタルアーカイブ化は一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)の共通目的基金の助成を受けて実施されたものです。