第3回「笹本恒子写真賞」受賞者、『キリシタンの里-祈りの外海』の作者、吉永友愛さんに決定

第3回「笹本恒子写真賞」受賞者決定

受賞者
吉永友愛(よしなが・ともなり)

受賞理由:

徳川幕府によるキリスト教徒の迫害、弾圧が260年も続いた外海(そとめ)の教徒たちは、迫害を逃れて山中に立て篭もり、信仰を守り続けてきた。その集落に住む末裔の敬虔な信徒たちの日常生活を、素朴な視線できめ細かく記録し、信仰の奥深さを丁寧に表現した力作に対して。

吉永友愛(よしなが・ともなり)

第3回「笹本恒子写真賞」受賞者 吉永友愛

プロフィール
1944年長崎市生れ。
1971年から長崎市の写真クラブで写真を始め、勤務の傍ら写真を撮り続ける。
1977年キリシタンの歴史、生活に興味を持ち撮影を始める。
1979年から全国公募「視点」展に応募し、奨励賞、特選など受賞。
1990年写真家一村哲也氏に師事。
長崎県美術協会名誉会員。

個展
2010年「出津(しつ)の里」長崎市出津教会信徒会館
2011年「ひぐれどき」長崎南山手美術館
2011年「唐寺の盆」〃
2013年「長崎‐キリシタンの里」銀座ニコンサロン
2014年「祈りの里」長崎市出津町旧出津救助院(国指定文化財)
2015年「外海‐悠久の時」〃
2017年「ひぐれどきII」長崎南山手美術館

写真集
2018年12月「キリシタンの里‐祈りの外海」自費出版

受賞の言葉
このたびは栄えある写真賞をいただき誠に有難うございました。
知らせを受けたときは「本当に自分が」という思いでしたが、時間が経つにつれ嬉しさがこみ上げています。関係者の方々へ厚くお礼申し上げます。軽い気持ちで始めたキリシタンの撮影でしたが、その歴史や信仰の深さを知るほどに引き込まれ、また、土地の人々の優しさに甘えてつい長い時間が過ぎてしまいました。今回の受賞で日々の成果が実ってこの上ない喜びです。私を受け入れてくださった長崎市外海(そとめ)地区の皆さまに感謝しています。

かんころの釜茹て 教会のミサて

教会…老女 聖地でのミサ

授賞式:12月11日(水) アルカディア市ヶ谷 私学会館
写真展:12月19日(木)~25日(水) アイデムフォトギャラリーアイデムフォトギャラリー シリウス

【笹本恒子写真賞について】

わが国初の女性報道写真家として活躍された笹本恒子(1914年生)名誉会員の多年にわたる業績を記念して、実績ある写真家の活動を支援する「笹本恒子写真賞」を平成28(2016)年に創設。選考委員は椎名誠 作家、大石芳野 写真家、野町和嘉 日本写真家協会会長(敬称略)。

笹本恒子(ささもと・つねこ)略歴

笹本恒子氏

笹本恒子氏

笹本さんは1914(大正3)年東京生まれ。画家を志してアルバイトとして東京日日新聞社(現毎日新聞社)で、紙面のカットを描いていたところ、1940(昭和15年財団法人写真協会の誘いで報道写真家に転身。日独伊三国同盟の婦人祝賀会を手始めに、戦時中の様々な国際会議などを撮影。戦後はフリーとして活動をし、安保闘争から時の人物を数多く撮影。JPS創立会員。
現在も写真集の出版、執筆。写真展、講演会等で活躍。

受賞歴

1996年東京女性財団賞、2001年第16回ダイヤモンド賞、2011年吉川英治文化賞、日本写真協会功労賞、2014年ベストドレッサー賞特別賞受賞。
2016年写真界のアカデミー賞といわれる「ルーシー・アワード賞」受賞。

 
 

選評:大石芳野

今回推薦された写真家14人のそれぞれの写真集や写真展資料はいずれも実力は申し分のないものでした。審査員は慎重な討議を重ね、その結果、選出したのが写真集『キリシタンの里祈りの外海』の作者である吉永友愛さんでした。
この写真集は前半がモノクローム、後半がカラー写真の構成となっています。長崎市外海(そとめ)地区のキリシタンの暮らしを1979年から2012年まで撮影し続けたものを、2018年12月に自費出版したものです。人びとの日々の営みを33年間にも渡りレンズを向けた映像に、里人に対する吉永さんの愛情深さがいかんなく滲み出ていて、審査員たちの間に静かな感動が広がりました。
まえがきには「山中に小さな教会がある集落に行ったのがきっかけで、この歴史と子孫の方たちに興味をもち、その生活、風土を記録してきました」と綴っています。16世紀のキリシタン弾圧で大勢が命の危険にさらされた日本の歴史を背負いながら、ひっそりと住み続けてきた人びとの信心深い姿、厳しい環境のもとで古里を大切に護ってきた姿、そして村の美しい教会のたたずまいなどを丁寧にとらえています。
この写真集の普遍的な意味合いは、キリスト教会ばかりではなく仏教寺院でも神社でも共通する無限の力を信じながら人びとが刻んできた歴史を写し取っていることです。同時に、日本中どこにでもある集落における日常生活が現代でも生きていると知らせている点も見逃せません。
吉永さんの写真の力量はなかなかのものです。望遠レンズの写真が目立ちますが、その特徴を活かして構図を決め、光のトーンや色調を考えながらシャッターチャンスを狙っています。“素人のような撮り方”が流行っているだけに古典的とも言われそうですが、いえいえ、普遍的なテーマに即した表現方法だと言えるのではないでしょうか。笹本恒子写真賞に相応しい作品だと審査員の意見が一致しました。