
プロアマを問わず、自分の作品を写真展(主に個展)で発表したいと思う人は、少なくないでしょう。ですが、写真展を開きたいと思っても、会場選びの基準や方法が分からなかったり、準備の仕方も見当がつかない……。そういう人も多いと思います。今回は写真展開催の準備や検討内容の実例として、株式会社アイデムの「フォトギャラリー シリウス」を取材しました。
取材と執筆:JPS 吉森信哉 取材協力:アイデムフォトギャラリー「シリウス」
会場は“作者の意図”と“来場者の視点”の両方を考慮して選択
写真関連企業のギャラリー、画廊、公共施設や商業施設の展示スペース、カフェやバーの店内。……などなど、写真展を開催する場所には、いくつかの候補が挙げられます。それらの中から選択する場合、下記のような点の検討が必要になります。
●応募資格(プロ・アマチュア、個人・グループ・団体、居住場所、など)
●会場費の有無(作品制作に必要な経費は別)
●申し込み方法と開催希望日(時期と日数)
●作品審査の有無
これらを念頭に置きながら“自分が重視する項目がクリアできるかどうか”を、最初の選択指標にすると良いでしょう。「フォトギャラリー シリウス」の場合、会場費は無料ですが、諸費用として77,000円(税込)が必要です。
また、写真展期間中の受付対応者(使用者本人が対応できない場合)が必要かどうかも確認しておきましょう。フォトギャラリー シリウスでも、その対応者の派遣が必要になります。
ここまで述べた項目は、主に“作者の意図”に基づいた内容になります。ですが、逆の立場に置き換えた“来場者の視点”も必要になります。
●多くの人が気軽に入れる建物や施設か?
●市街地や最寄り駅などからのアクセス
●入場料の有無
当たり前の話ですが、写真展を開くという事は“人に見てもらう”という事でもあります。ですから、多くの人に写真展を見てもらおうと思ったら、上記の条件が良い会場を選ぶのが得策です。

東京メトロ丸ノ内線「新宿御苑前」駅から徒歩2分と、アクセス条件が良い「フォトギャラリー シリウス」。アイデム本社ビルの2階にあり入場無料。ビル全体の雰囲気も良く、出入口(階段を上がった所)も分かりやすいので気軽に来場できる。
展示のキャパシティは? 会場内の雰囲気は?
展示する作品群も関係してきますが、壁面のキャパシティがどのくらいか? という条件も念頭に置く必要があります。作品ボリューム(サイズと点数)に対して壁面が足りない。その反対に、作品ボリュームが少ないのに壁面が多い。こういった事態を避けるためです。そのためには、会場選びの際に“自分の作品を並べるイメージ”を持って下見をすると良いでしょう。
また、会場内の環境も重要です。来場者(特に知人や関係者以外)が落ち着ける雰囲気か否か。壁面の素材や色。場内の明るさや照明の種類。それらの条件を念頭に置きながら、自分の作品を展示する会場に相応しいかどうかを判断するのです。

取材時に開催されていた、中野いずみ氏の写真展「Father」。大部分の作品は半切サイズの額に入れられて、バランス良く展示されていた。壁面の作りは、濃いグレーの布クロス製で、とても落ち着いた雰囲気が漂う。

ギャラリースペースの隣(外壁側)に設けられたコミュニケーションスペース。こういった空間の存在も“居心地の良い写真展会場”につながってくる。

「フォトギャラリー シリウス」の展示用照明は、暖色系の色味のスポットライト。当然、展示作品の見え方もその影響を受ける。作品制作時や展示の際には、こういった点も計算に入れる必要がある。
“審査あり”では、作品のテーマや構成、プリント品質などに注目
写真関連企業のギャラリーでは、一般的に作品審査があります。「フォトギャラリー シリウス」にも、選考委員会による審査があります。この“審査あり”という点が、ハードルの高さを感じたり、申し込みを躊躇する要因になるかも……。また、審査時に自分の経歴(所属団体の有無、写真歴など)も影響してくるのでは? といった不安も生じるかもしれません。
これらの点について、フォトギャラリー シリウスの担当者に尋ねてみました。
まず、審査結果の可否については、作品内容が基準に満たなかったり、応募作品数が多い場合などは“出展見送り”になるケースがあるそうです。
そして、写真の経歴に関しては、ある程度は確認するとの事。しかし、実際に応募された出展見本の作品クオリティやプリント状況の方を重視するそうです。
作品のテーマも気になるのでは? 自然風景や花などを題材にした、いわゆる「花鳥風月」的なテーマは平凡で審査が通りにくいのでは? そんな考えも脳裏をよぎります。
この点についても、シリウスの担当者に尋ねてみました。
過去には、そういうテーマの個展やグループ展も開催されてきましたが、個展の場合は多少ハードルが上がる印象だそうです。写真のクオリティ(内容やプリント品質)に加えて、40枚以上並べた場合の構成にメリハリがあって見る人に単調な印象を与えない。そんな作品群なら審査を通過しやすい、との事です。

「フォトギャラリー シリウス」への出展申し込み(審査)をシミュレーション。自分が撮りためてきた尾道の風景&スナップ写真を、A4サイズで40点ほどプリントして提出。一緒に作品の解説とプロフィールも添える。
展示サイズと全体構成は、見やすさと同時にメリハリも必要
作品の展示を想定する場合、点数と同時にサイズも考える必要があります。展示の内容や点数が同じでも、サイズが違うと作品の印象が変わったり、会場の雰囲気や密度感も変わってくるからです。
写真関連企業ギャラリーなどでは、サイズの異なる額が一定数確保されています。「フォトギャラリー シリウス」の場合、全倍(25枚)、全紙(40枚)、半切(70枚)、四切(60枚)、と用意されています。これらの額は、写真展企画・額装・展示サポートを行う会社「フレームマン」から買い揃えたものです。ただし、これらの額には額装用マット(作品部分を切り抜いた厚さ2mm前後の紙や布製の内枠)が付属していません。ですから、オーバーマット展示をしたい場合には、マット紙を自分で用意したり、フレームマンなどに発注(自己負担で)する必要があります。
そして、このギャラリーでは、展示可能枚数の目安を、壁面のみで半切40枚としています(展示パネルの追加枚数で目安は変わる)。このように展示可能枚数の基準にも用いられている半切の額は“スタンダードな展示サイズ”と言えるかもしれません。ちなみに、取材時に開催されていた中野いずみ氏の写真展「Father」でも、大半の作品が半切の額で展示されていました。
ですが、すべての作品が同じサイズだと、全体構成は少し単調に感じるかもしれません。特に気に入った作品は、目を引くように全倍や全紙サイズにする。類似性や連続性のある複数枚の作品は、2段掛けにして個々の変化やリズミカルさを印象付ける。そういったメリハリを効かせた演出も必要になります。
「額装以外の展示方法も可能なの?」
この点についても、 シリウスの担当者に尋ねてみました。このギャラリーでは、クロスの壁面に釘打ちをして、そこに写真額やゲタをはかせた木製パネルなどをかけるのが一般的な展示方法です。しかし、パネル張りなどを展示するケースもあるそうです。ただし、その場合は作品自体に目立たないよう釘打ちをするので、その点は「ご了承ください」との事。ここで写真展を開催する人は、各自のイメージと予算にあわせて様々な展示方法を選んでいるそうです。

「フォトギャラリー シリウス」の4サイズの額。左から、全倍、全紙、半切、四切。

大部分の作品に半切額が使用された、中野いずみ氏の写真展「Father」。安心感のあるオーソドックスな展示スタイルが好印象。
適度な文章を添えると、深みのある写真展につながる
言うまでもなく、写真展の主役は作品群です。しかし、並べられた作品群の情報(内容)だと、自分の表現意図が十分に伝わらない可能性があります。また、来場者の立場から見ても「いつどこで撮ったものか?」や「この光景や被写体の何に惹かれて撮ったのだろう」といった疑問も生じます。
そこで、出展者と来場者との“認識の橋渡し”になるのが、展示の最初や最後に掲げる挨拶文やプロフィールです。撮影場所や被写体に関しての解説・紹介、自分の表現意図、来場者へのメッセージ(どういうスタンスで見て欲しいか)。など、文章の内容は様々ですが、それを展示の前後や途中に“適切かつ適度”に添えると、来場者が作品に対する関心や理解を深めるきっかけになるのです。

中野いずみ氏の写真展「Father」にて。作品展示の手前には、ピン止めされたエッセイ風の文章パネル。そして、最初の作品の横にも、短めのエピソード(約30字×6行)が添えられている。

写真展「Father」の後半あたり。半切額がメインの作品群の中で、一回り大きな全紙額の作品がアクセントになる。そのひとつ手前にも、縦書きの短めのエピソード(約30字×6行)が添えられていた。
学友たちと開設した自主ギャラリー、カメラメーカーのギャラリー、画廊。これまで私は、そういった場所で個展を開催してきました。
その経験を通して思ったのは、写真展は創作活動の集大成であると同時に“自作を見つめ直す機会でもある”という事です。展示した自作を第三者のように俯瞰して見たり、来場者の意見や反応に手応えを感じたり落胆したり……。こういった感覚や感情を得られる事が、写真展の醍醐味と言えるでしょう。
最後に、今回取材させて頂いたフォトギャラリー シリウスからのメッセージを紹介します。
「シリウスは、プロ・アマチュア・グループ含め、多くの方々にご利用いただいております。日本写真家協会の新入会員展を機に、グループでご応募してくださる方もいらっしゃいます。皆さまのご応募を心よりお待ちしています」
との事です。
写真展の開催に興味のある人にとって、小稿が少しでも参考になれば幸いです。
●アイデムフォトギャラリー「シリウス」
